日本食は海外各国で人気となり、日本産の食品も年々輸出が増加しています。
しかし食品の輸出に関しては、さまざまな規制が存在し輸出のための手続きも簡単ではありません。個人が食品を海外に送る場合は、そもそも発送できる食品なのかどうかも気になる点です。
そこでこの記事では、海外に発送できない食品の種類や、発送する際の注意点について解説します。
国によっては海外発送できない食品がある
海外発送する際にはその品物が禁制品に該当するかどうかを確認しなければなりません。
禁制品とは、法律や条約で輸入できない品物のことで、万国共通で送れないものと国によって送れないものがあります。
万国共通で送れない品物は、火薬や引火性液体などの危険物のほかに凶器や農薬を含む毒物などです。
食べ物に関しては万国共通で禁制品となっているものはありませんが、国によって輸入できない食品がたくさんあるので注意が必要です。
禁制品全般に関しては、下記の記事をご覧ください。
関連記事:海外発送で送れない禁制品とは?国別に送れない品目にも注意!
国別禁制品リスト(食品)
国・地域ごとに送れない食品を紹介します。
※送れない品目であっても条件付きで許可されていたり、規制内容が変更されたりする可能性があります。
アメリカに送れない食品
・牛肉
・オリーブオイル
・アルコール飲料
・肉、肉エキスが入っている製品(肉団子、カップラーメンなど)
・腐敗しやすい物質など(腐敗しやすい魚、果実、野菜など)
オーストラリアに送れない食品
・乳製品、卵
・乾燥植物素材(種子・果物の皮のような品目の入った茶、ハーブ、種子など)
・果物、野菜
・植物製品(米、小麦、穀物類、食用の種子類、種実類および豆類)
・肉、肉製品(生鮮、冷凍、加工肉を含む)
中国に送れない食品
・動物を使用した製品(肉粉、骨粉、魚粉などの動物由来の飼料)
・卵および卵製品
・生肉または調理済みの肉
・ワイン
※2024年9月現在、東京電力福島第1原子力発電所のALPS処理水の海洋放出により、日本産の水産物が全面的に輸入禁止となっています。
イギリスに送れない食品
・たまご
・はちみつ
・腐りやすい食品
・豆、粉、コーヒー、カカオ
・フィッシュミール(魚粉)
・肉(生、冷凍、加工肉を含む)
・スパイス、ペッパー
EUに送れない食品
2011年の東日本大震災以降行われていた日本産食品に関する輸入規制が2023年8月に撤廃され、ヨーロッパへ食品輸出がしやすくなりました。
EU全体の規制だけでなく各国独自の禁制品や規制があります。
以下の食品は原則的にEU域内への輸入ができません。
・モモ
・リンゴ
・キウイフルーツ
・かんきつ類
・肉の塊が入っているレトルト食品、カップラーメンなど
食品の輸出で注意が必要な規制
食品の輸出に関しては遵守しなければならない国際的な規格がいくつか存在します。
残留農薬基準値と食品添加物
残留農薬や食品添加物に関しては、日本の国内基準と海外各国の基準が異なるケースがあるので、事前のチェックが重要です。
一般に欧米は、日本よりも残留農薬に関して厳しい基準を設けています。
食品添加物に関しては、以下のサイトから確認できます。
CODEX(コーデックス)
CODEX(コーデックス)とは、現在世界で通用する唯一の食品規格です。
1963年、国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)が合同で委員会を設立し、規格の策定を始めました。
消費者の健康保護や食品の公正な貿易の確保などのために、食品の標準規格やガイドライン、農薬の最大残留値などが定められています。
現在、180カ国以上がコーデックス委員会に加盟しています。
HACCAP(ハサップ)
HACCP(ハサップ;Hazard Analysis and Critical Control Point)とは、食中毒や異物の混入などのリスクを低減・除去するための衛生管理の手法です。
世界各国で導入が進み、多くの国でこの規格に基づいた食品の製造・流通が義務付けられています。
日本でも2021年6月に、原則として、すべての食品等事業者がHACCPに沿った衛生管理をするように義務づけられました。食品の輸出の際には特に規格の順守に注意しなければなりません。
その他の規制
他にも食品の輸出の際に注意すべき規制がいくつかあります。
たとえば、EUには環境への負荷を減らし廃棄物を削減するために、製品の容器・包装に関する規制があります。
また、フランスではワインについてさまざまな基準を設けています。産地表示に関しては厳しい制限があり、ブドウの品種や製造方法にも細かく表示方法が決められています。
これらの基準を満たさないワインはフランス国内には輸入できません。
国・地域ごとの規制
食品の輸入は、国や地域によって規制や輸入のための手続きが大きく異なります。海外発送する品目と相手国ごとに事前の問い合わせをするなど、しっかりと準備しなければなりません。
中国|日本産水産物は輸入禁止
2023年8月に開始された東京電力福島第1原子力発電所のALPS処理水の海洋放出により、中国では日本産の水産物の輸入が禁止されてきました。
しかし、2024年9月に条件付きで輸入再開へ向けて協議をすることで日中両国が合意。ただちに全面解禁とはならない見込みですが、中国向けに食品の輸出を検討する場合、日中両国による今後の協議の動向に注目する必要があります。
EU|世界で最も厳しい規制
EUは食品に関して世界で最も厳しいといわれる規制を行っています。規制は域内で生産される農作物・食品だけでなく、輸入される品目にも適用されます。
EU全体の規制だけでなく、各国独自の規制もあるので注意が必要です。
混合食品に関する規制
混合食品とは、動物性加工済原料と植物性原料の両方を含む食品で、みそやインスタントラーメン、冷凍食品などさまざまな加工食品が該当します。
混合食品をEUへ輸出する場合は、衛生証明書や輸出検疫証明書の取得が必要です。
残留農薬に関する規制
EUは人の健康に害を与える可能性のある食品の残留農薬に関して非常に厳しい規制を設けています。
科学的にはっきりと因果関係が証明されていなくても、健康に大きなな影響を及ぼす恐れがあると考えられる場合、予防的な措置として該当する農薬の使用を禁止したり、残留農薬の基準を厳しくしたりする方針(「予防原則」)を取っています。
日本では使用が認められている農薬(ネオニコチノイド系農薬)がEUでは禁止されていたり、残留農薬基準が緩い農薬に厳しい基準が設けられていたりするケースがあるので注意が必要です。
規制が厳しいので、たとえば欧米で非常に人気のある日本茶は、EUへ輸出する製品はほぼすべてが有機栽培されたものです。
緑茶の国内消費量は年々減少傾向ですが、世界的な日本食ブームや健康志向を背景に輸出用は過去10年で大幅に増加しています。
EU内各国の規制
EU全体の規制だけではなく、EU内の各国で独自の規制があります。
主な国の独自の禁制品をいくつか紹介します。
イタリア | ・塩 |
フランス | ・野菜・プラム・魚の缶詰(必要な表記がされていないもの)・ワイン |
ドイツ | ・アプサント(リキュールの一種、別名アブサン)およびこれに類似する飲料など・牛乳およびび乳製品・カカオの実 |
食品を海外へ送る際の注意点
食品を海外へ発送する際には、上記以外にも以下のような点に注意しなければなりません。
自己使用の場合許可されるケースがある
原則として食品全般を輸入禁止にしている国がいくつかあります。
しかし、発送人自身が使用したり、受取人が消費したりするのであれば認められるケースがあります。
例えば、海外への留学生に対して家族が日本の食料品を送る場合などです。
生鮮食品はほぼ不可能
航空便では、ほとんどの生鮮食品は発送できません。
各国の規制などにより食品の輸入が極めて困難な仕向け地は、輸送会社の規約で発送自体を受け付けていないケースがあるので注意しなければなりません。
事前の確認が重要
輸送会社で発送が可能であっても、現地の通関の際に税関判断で量や、申告価格、食品に含まれる成分などによって輸入ライセンスや使用許可書、各種証明書などを求められるケースがあります。
必要となる書類・許可は国ごと・品目ごとによって異なります。
可能であれば現地税関への事前問い合わせなど、しっかりとした準備をしましょう。
食品の海外発送では輸出先国の食品に関する制度や規格への対応が重要
食品を海外発送する際は、輸出先の国や地域によって禁制品や規制が異なる点を認識しておく必要があります。
2011年に起きた福島第一原子力発電所の事故以降、世界各国で日本産食品の規制が続いてきましたが、2023年8月にはほぼ撤廃されました。
しかしALPS処理水の海洋放出により、中国では2023年8月に日本産水産物が全面的に輸入禁止になっています。
食品に関する規制は日々刻々変化するので、最新の情報収集が欠かせません。
海外では日本食ブームが続いているので、日本産・日本製食品の輸出には大いにチャンスがあります。海外へ食品を発送する際は、輸出先国の規制や手続きをしっかりと把握することが重要です。