イギリス(英国)のEC市場は世界3位で、ヨーロッパでは最大の規模です。
イギリス(英国)は日本の伝統文化やポップカルチャーとも親和性が高く、日本国内での販売が低迷している中小企業にとっても魅力のある市場といえるでしょう。
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東京都やJETROもイギリスでの日本文化や日本の伝統的な工芸品などのPRに力を入れています。1
この記事では、イギリスで売れている日本の商品や成功事例を紹介し、さらに、イギリス向けの越境ECで注意すべきポイントや配送方法についても解説します。
イギリス(英国)のEC市場が魅力的な理由|越境ECの可能性
イギリス(英国)の人口は約6,800万人で、そのうちインターネットを利用する人は97.8%にも上ります。イギリス(英国)のEC市場は22兆円以上で、アメリカ(米国)と中国に次いで世界第3位の市場です。
イギリス(英国)では、モバイル端末とキャッシュレス決済の普及が早くから進みました。さらに英語を公用語とする国が多く、越境ECに対する抵抗感がない点も越境EC市場が拡大している理由の一つです。
イギリス(英国)のEC市場には、コロナ禍以降2つの特徴があります。食品のEC市場の拡大と高齢の利用者の増加です。
新型コロナウイルスの流行により、食料品をオンラインで購入する人が増えました。また、若者に比べてECを利用する割合が低かった高齢者も、コロナ禍以降に高齢の利用者が増加しています。
参考:Ecommerce in The United Kingdom
イギリス向け越境ECでの売れ筋日本商品ジャンル
イギリス向けの越境ECビジネスで人気がある日本商品のジャンルを紹介します。
日本のポップカルチャー商品(アニメ・ゲームグッズ)
日本のおもちゃ・ゲーム・アニメは世界中で人気ですが、イギリスも例外ではありません。
日本のおもちゃやアニメグッズは店頭ではなかなか手に入らないため、オンラインで日本国内での販売価格よりも高値で取引されるケースもあるようです。
ポップカルチャー以外の日本文化に対する関心も高く、日本に関するさまざまなイベントが開催されています。
なかでも「HYPER JAPAN」は2010年以降、コロナ禍の時期をのぞいて毎年開催され、多くの来場者でにぎわっています。出店する企業は多岐にわたり、アニメ・ゲーム業界、食品・酒類、伝統工芸品などさまざまです。
日本のアパレル関連製品
イギリスではオンラインで購入する商品ジャンルのうち、アパレル製品が上位に位置しています。
越境ECでも同様の傾向が見られ、アパレル製品は日本商品の中ではおもちゃ・ゲーム・アニメに次いで非常に人気のあるジャンルです。
日本の生活雑貨
日本の文房具やキッチン用品、裁縫道具なども人気です。
具体的な商品としてはサインペンや、絵具、お茶(特に抹茶)などもよく売れています。
日本の精密機器(カメラ・カメラパーツ)
日本の精密機器には、今でも多くの海外のマニアがいます。
イギリスでは特に、日本のカメラ関連のアイテムが人気です。
フィルムカメラだけでなく、レンズなどのパーツやデジタルカメラがコンスタントに売れています。
イギリス向け越境ECの成功事例
イギリス向けの越境ECで成功している企業・団体の事例を紹介します。
いずれも日本製品の強み・オリジナリティを訴求して海外展開することで成功している企業・団体です。
ユニクロ
ユニクロはイギリスで圧倒的な存在感を誇る日本ブランドとして知られ、現在イギリス国内に15店舗を展開しています。
ユニクロが最初に海外進出を果たした市場もこのイギリスで、2001年9月にロンドンで第1号店をオープンしました。イギリスのアパレル製品と比べて手頃な価格で日常使いに適した衣類を提供するブランドとしてイギリス市場で人気になっています。
ユニクロは、高品質なデザイン性を持つ洋服をリーズナブルな価格で販売することで、イギリス市場においても、地元の人気ブランドに引けを取らない魅力を持ち、消費者は幅広いスタイルの中から自分に合った洋服を選ぶことができます。
Map Camera
「Map Camera」は、シュッピン株式会社が展開するレンズカメラのECサイトで、新品カメラと中古カメラのどちらも販売しています。
「eBay Japan Awards 2023」では「セラー・オブ・ザ・イヤー」を受賞しました。
シュッピン株式会社はECを専門に行う企業で、ほかにも時計や筆記具などの販売に特化したECサイトを展開しています。
株式会社岡田園
株式会社岡田園は、広島県福山市にある日本茶・抹茶・健康茶の専門店で、大正7年創業の老舗です。
2021年からお茶と茶道具の海外販売を開始。現地消費者向けの商品パッケージ作成や日本にはないお茶の飲み方・作り方などの工夫によって海外での販売を拡大しています。
たとえばプラスチック製の茶筅(ちゃせん)は日本ではあまり好まれませんが、竹製に比べて手入れが簡単である点が海外消費者の心を掴み、好調な売れ行きです。
イギリスではイギリス国内の販売に必要なVAT登録を完了し、さらに越境ECでの販売に力を入れています。2
参考:株式会社岡田園は海外消費者のニーズに沿った商品で、越境ECで成功
江戸東京きらりプロジェクト
「江戸東京きらりプロジェクト」は、東京都が江戸東京の伝統ある技や老舗の商品の価値と魅力を国内外に伝えるために始めた事業です。
当初は中国向けのみでしたが、2021年からイギリスとフランス向けにECサイトを開設しました。
包丁、ワイングラス、風呂敷、海苔などの事業者が出店しています。
参考:江戸東京きらりプロジェクト|Edo Tokyo Kirari Online Store
イギリス向け越境ECを成功させるポイント
イギリス向けに越境ECを成功させるには、イギリス国内の制度や消費者の購買行動を理解することが重要です。
適切な配送方法を選択する
イギリス国内の配送は他国に比べて時間がかかり、遅延も頻発しています。さらにコストも割高です。
越境ECでは、配送問題で失敗する可能性が高いので十分注意しなければなりません。
英語圏の国もターゲットにする
イギリス向けに越境ECを行う場合、英語のECサイトを作成することがコスト面でもリソース面でも最も大きな負担となります。
ただし、英語のサイトはイギリス・アメリカの消費者だけが目にするわけではありません。英語を公用語・準公用語としている国は、50カ国以上、第一言語として英語を話す人口は約21億人にも達します。
単にイギリスだけでなく、その他の英語圏の国や地域もマーケティングの対象として考えることが重要です。
アメリカも英語圏ですが、イギリスの場合、旧植民地との結びつきが強く今でも英連邦(コモンウェルス)を形成していて文化的にもイギリスの影響を受けている国が多数あります。
たとえば食文化では、紅茶を飲む習慣が定着している国がたくさんあります。スポーツでは、イギリスの旧植民地の多くの国では、イギリスを起源とするラグビー・クリケット・ポロ・モータースポーツなどが盛んです。
イギリス向けのマーケティングを工夫することで、イギリス以外の英語圏の消費者にも訴求できる可能性を考慮しましょう。
エシカル消費に留意する
エシカル消費とは、消費者が社会的課題の解決を考慮したり、そうした課題に取り組む事業者を応援しながら消費活動をすることです。
価格やブランド力だけで商品を選択するのではなく、その商品の製造・流通過程を含めて公正で環境に配慮しているかどうかを重視して購入するような購買行動を指します。
イギリスは「エシカル消費」という言葉の発祥地といわれ、多くの消費者が関心を持っています。
イギリスで商品を販売する際には、単に商品の魅力や価格をアピールするだけではなく、この点も配慮しなければなりません。
イギリスにはない日本商品をそろえる
日本企業がイギリス向けの越境ECで成功するためには、日本製品のオリジナリティや希少性をアピールする必要があります。
イギリスにはない、またはあったとしても値段の高いものは、日本企業にとって大きなチャンスです。
イギリス人の好む日本のポップカルチャーや伝統文化などに関連する商品は、中小企業にとっても有望な分野といえるでしょう。
イギリス向け越境ECの注意点
イギリスは2020年1月にEUを離脱しました。
フランスやドイツなどEUに所属する他のヨーロッパの国とは輸入の手続きや税制が異なる点に注意しなければなりません。3
イギリス独自の税制を理解する4
英国向けに物品を輸出する際は、関税・物品税・付加価値税(VAT)などの税制を理解する必要があります。
VAT(Value Added Tax;付加価値税)とは、多くの国で導入されている間接税の一種で、日本の消費税に相当します。
関税・物品税に関しては事前の登録は必要ありません。輸入時に納税すれば大丈夫です。
しかし、VATは事前に付加価値税登録(VAT登録)をしておかなければなりません。
イギリスの場合、一部の軽減税率が適用される商品(高齢者の移動補助具や禁煙製品など)をのぞいて標準税率として20%のVATが適用されます。
物流が大きな課題
イギリスでは、かつては日本の郵便局にあたる公営のRoyalMail(ロイヤルメール)が一般消費者向けの小口輸送を担ってきました。
RoyalMailは現在民営化されていますが、サービスの質はまだ十分とはいえません。配送に時間がかかり料金も割高なので、国民の評判はそれほど高くないようです。
越境ECにおいても、イギリス国内の物流に配慮する必要があります。
イギリス独自の禁制品に注意
万国共通の禁制品とは別にイギリス独自の禁制品があります。
関連記事:海外発送で送れない禁制品とは?国別に送れない品目にも注意!
イギリスの禁制品は、まったく輸入できない「禁止物品」と、ある条件を満たすと輸出できる「条件付許容物品」の2つに分かれています。
以下の食品は基本的にはイギリスへは発送できません。
豆、粉、コーヒー、カカオ、フィッシュミール(魚粉)、肉(生、冷凍、加工)、スパイス、ペッパー |
ただし、保存状態やある程度までの重量によっては発送できる場合があるので、詳しくはぜひポチロジへお問い合わせください。
イギリス向け越境ECでおすすめの配送方法
越境ECでの配送方法は、配送コストと配送品質の両方を慎重に検討して選ぶ必要があります。
EMS(国際スピード郵便)
EMSは日本郵便が行っている世界120の国・地域に重量30kgまでの荷物を配送するサービスです。
EMSでは、貴重品(現金・有価証券・小切手・貴金属、信書、パスポート、宝石類・骨董品・重要美術品・未現像フィルムなど)は送れません。
軽量の荷物を送るのであれば、比較的割安で配送日数も短く便利ですが、イギリス国内の配送を担当する業者のサービスにやや問題があるとの評価があります。
ヤマト運輸
ヤマト運輸は世界200を超える国・地域に「ドア・ツー・ドア輸送」が可能な「国際宅急便」を提供しています。
発送できるサイズの上限は、縦・横・高さの合計が160cm以内で、重さが25kgまで。
イギリスの主な都市までの所要日数は最短で5~7日程度(発送する曜日によって異なる可能性があります)です。
ポチロジ
「ポチロジ」は株式会社ビィ・フォアードが提供する海外輸送サービスです。
重量0.5kg刻みで細かく料金設定がされているのでどんな商品でも比較的割安に商品を発送できます。
重量30kgを超える商品にも対応可能で、壊れ物や高級品などは発送前に梱包の相談も受けています。
他の国際宅配便サービスより配送料金が安いのも魅力のひとつです。
イギリスへはワインのアルコール飲料や衣類や寝具、美術品などサイズの大きな荷物や取り扱いに注意を要する荷物の発送にも豊富な実績があります。
おすすめ配送方法の比較表
サービス名 | 重量制限 | サイズ(3辺合計) | 日数 |
EMS | 〜30kg | 〜275cm | 3〜4日 |
佐川急便 | 〜50kg | 〜260cm | 3〜5日 |
ヤマト運輸 | 〜25kg | 〜160cm | 4〜6日 |
ポチロジ | 〜1,000kg(※2) | 〜660cm(※3) | 最短2日〜 |
※2 パレットに未積載の場合は70kg
※3 パレット利用の場合は長さ300cm x 奥行200cm x 高さ160cm(3辺合計660cm)まで。パレットに未積載の場合は長さ120cm x 奥行80cm x 高さ80cm(3辺合計280cm)まで。
イギリス向け越境ECでは配送方法が成功のポイント
イギリスはアメリカ、中国に次ぐ世界第3位のEC大国なので、海外へ自社商品を販売したい日本企業にとって大きなチャンスのある国です。
多くのイギリス人は、日本のポップカルチャーや伝統文化に親しみを感じています。イギリス国内では手に入れられないものをうまくマーケティングして提供すれば成功の可能性があるでしょう。
ただし、イギリス国内の物流事情はあまりよくありません。オンラインショッピングでは、配送の遅延や届いた商品の破損などが顧客満足度の低下につながるリスクがあるので、物流業者の選択が大変重要です。
イギリス向けの越境ECでは、日本からイギリスまでの輸出を担当する物流企業だけではなく、イギリス国内での配送業者も重要なカギを握っています。
イギリス向けに商品の輸送を検討されている方は、ぜひポチロジにご相談ください。