国内市場が成熟するなか、化粧品ビジネスの新たな成長手段として注目を集めているのが「越境EC」です。
日本製の化粧品は、世界的に見ても品質や安全性への信頼感が高く、アジアを中心に海外需要が年々拡大しています。
しかし、越境ECで化粧品を販売するとなると、輸入規制や輸送制限、関税など、国内ECとは異なる部分も多く、さまざまな注意点があります。
本記事では、化粧品の越境ECを検討するうえで押さえておきたい基礎知識として、市場規模の最新動向、有望な販売エリア、運営時に注意すべきポイントなどを詳しく解説します。
化粧品の越境EC市場
化粧品分野における越境EC市場は、世界的に見ても高い成長性が見込まれている領域です。
経済産業省が公表した「令和6年度 デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)報告書」によると、越境EC全体の市場規模は2024年時点で約1.01兆米ドル(USD)とされており、2034年には約6.72兆米ドル(USD)まで拡大する見通しが示されています。
この成長を牽引しているカテゴリーの一つが、化粧品や美容関連商品です。
とくに東南アジアや台湾では日本製商品の人気が高く、越境ECプラットフォーム「Shopee」においても、日本発の商品カテゴリーの中で「美容品・化粧品」が上位を占めています。
このように、化粧品の越境EC市場は、需要の拡大とともに参入機会が広がっており、今後も継続的な成長が期待される分野と言えるでしょう。
化粧品の越境ECが注目されている背景

化粧品分野で越境ECが注目を集めている背景には、大きく以下の2点が挙げられます。
- 日本製化粧品への世界的な人気
- 実店舗よりも初期投資を抑えた海外展開
国内市場が成熟するなか、海外需要を取り込む手段として、越境ECは現実的かつ有効な選択肢です。
続いて、化粧品の越境ECが注目されている背景について見ていきましょう。
日本製化粧品への世界的な人気
日本製化粧品は「J-Beauty」として海外で認知が進んでおり、安全性の高さや品質管理の厳しさなどが高く評価されています。
トレンド性や斬新な発想で支持を集めるK-Beauty(韓国コスメ)に対し、J-Beautyは「安心して長く使える化粧品」というイメージが強いのが特徴です。
そのため、敏感肌向け商品や、機能性重視のスキンケアが支持されやすい傾向にあると言えるでしょう。
実店舗よりも初期投資を抑えた海外展開
越境ECの大きな利点は、現地に実店舗を構えなくても海外市場へ参入できる点です。
テナント費用や人件費をかけずに商品を販売できるため、初期投資を抑えた形でテストマーケティングを行えます。
市場の反応を確認しながら商品ラインナップや価格戦略を調整できるため、リスクを最小限に抑えた海外展開が可能です。
化粧品の越境ECで狙うべきエリア・市場

化粧品の越境ECでは、国や地域ごとに購買行動や規制、好まれる商品特性が大きく異なります。
そのため、やみくもに海外販売を始めるのではなく、エリアごとの特徴を理解したうえで優先順位を決める視点が欠かせません。
ここでは、化粧品の越境ECで狙うべき4つの主要エリアや市場について、詳しく解説します。
中国
中国は、化粧品の越境ECにおいて重要な市場の一つです。
人口規模が大きく、中間所得層の拡大により海外ブランドを購入する層が広がっており、越境EC事業者にとって非常に大きな市場となっています。
ユーザーの購買行動は、WeChatやRED(小紅書)などの中国発祥のSNSと密接に結びついており、口コミや使用レビューが購入判断に大きく影響します。
そのため、KOL(Key Opinion Leader:特定分野において高い専門性や影響力を持ち、多くのフォロワーから信頼されている発信者)やインフルエンサーを活用した情報発信が効果的です。
日本製化粧品は安全性や品質管理への信頼が高く、スキンケア分野を中心に安定した需要があります。
一方で、規制や通関ルールの変更が起こりやすいため、最新情報を継続的に確認する必要があるでしょう。
アメリカ
アメリカは、EC市場規模が大きく、化粧品分野でも有望なエリアです。
多民族国家であるため、肌質や嗜好が多種多様で、幅広いニーズに対応した商品が求められます。
近年は、オーガニックやクリーンビューティーへの関心が高く、含有成分や環境配慮が購買判断に影響を与える傾向があります。
そのため、機能性だけでなく、ブランドの理念や背景を明確に伝えることが重要なポイントです。
ただし、FDA(米国食品医薬品局)による化粧品規制や表示ルールが存在するため、成分表記や効能表現には慎重な対応が求められるでしょう。
ヨーロッパ
ヨーロッパではEU共通の化粧品規則が適用されており、成分規制が非常に厳しい点が特徴です。
その分、基準をクリアした製品は高品質と評価されやすく、ブランド価値を高めやすい市場と言えるでしょう。
また、成分表示や製造背景への関心が高く、ナチュラルコスメや低刺激設計の商品は受け入れられやすい傾向があります。
EU内は制度が共通している一方で、消費傾向は国ごとに異なるため、初期はターゲット国を絞った展開がおすすめです。
中東
中東では、高所得層を中心に高価格帯化粧品の需要が強く、スキンケアやフレグランス分野で市場が拡大しています。
単価が高くても品質やブランドイメージが評価されれば、収益性の高い販路として機能するでしょう。
一方で、宗教や文化的な背景への配慮により、成分への制限やハラール対応が求められる場合もあるため、商品設計や訴求表現には注意が必要です。
市場規模は限定的ですが、ターゲットを明確にすれば、ニッチでも成果を出しやすいエリアといえます。
東南アジア
東南アジアは、若年層人口が多く、スマートフォン経由のEC利用が定着しており、新規参入もしやすい環境にあります。
シンガポール発祥のショッピングアプリであるShopeeなどを中心に、日本製化粧品の認知も拡大しています。
価格感度は比較的高いものの、美白や保湿といった機能性訴求は支持されやすい点が特徴です。
また、物流距離が近く、配送コストを抑えやすい点も魅力と言えるでしょう。
テストマーケティングが始めやすい市場として、多くの事業者が参入しています。
化粧品の越境EC運営で注意すべきポイント
次に、化粧品の越境EC運営で注意すべきポイントについて、以下の4点を紹介します。
- 各国の化粧品規制に対応する
- 輸送手段ごとの取扱制限を確認する
- SDSを添付して安全性を証明する
- 各国の関税ルールを理解しておく
化粧品の越境ECは、国内向けECとは異なる規制や実務上の注意点が多く存在します。
化粧品に対しては、各国の法規制や輸送条件が厳しく設定されがちなため、しっかりと確認しておきましょう。
各国の化粧品規制に対応する
化粧品の定義や成分ルールは国によって大きく異なり、日本で販売されている商品でも、海外では輸入自体が認められない場合があります。
とくにEUなどでは成分規制が厳格で、微量の配合であっても禁止成分に該当すれば販売不可となるため、注意しましょう。
規制を把握しないまま出品すると、通関段階で差し止めや返送、最悪の場合は廃棄処分となっていしまうおそれがあります。
事前に販売国ごとの規制を確認し、条件を満たせない場合は、あらかじめ販売対象国を絞る判断も必要になるでしょう。
輸送手段ごとの取扱制限を確認する
化粧品は、輸送手段によって取り扱いの可否が大きく異なります。
たとえば国際郵便を利用する場合は、IATAの危険物関連ルールが適用されるため、可燃性成分やアルコールを含む商品は発送対象外となるケースが多く見られます。
引火点が60℃以下と判断される化粧水や美容液は、成分自体に問題がなくても「輸送不可」となるケースが少なくありません。
一方、DHLやFedExなどの国際宅配便では、条件つきで送ることができるケースもあるため、輸送手段ごとの取扱制限をあらかじめ確認しておきましょう。
関連記事:海外発送できる化粧品・できない化粧品の見分け方|危険品扱いの条件とは?
SDSを添付して安全性を証明する
オイル成分やアルコールを含有する化粧品については、安全性を確認する目的からSDS(安全データシート)の提出が求められることがあります。
SDSとは、成分の可燃性や引火点、危険性の有無、適切な保管・取り扱い方法などを体系的に示した文書であり、化粧品が国際輸送や輸入審査に適合しているかを判断するための重要な根拠です。
SDSが未提出、または情報が不十分な場合は、成分に問題がなくても通関が止まる可能性があるため注意しましょう。
越境ECでは、販売前に最新のSDSを取得し、記載内容が輸送・通関要件を満たしているか確認する体制を整えておく必要があります。
各国の関税ルールを理解しておく
越境ECを通じて、海外の消費者に商品を販売する場合、商品代金とは別に関税やその他の税金が発生する点を見落としてはいけません。
関税の税率や免税条件は国ごとに異なり、同じ商品でも販売先によって販売コストが変わります。
関税は原則として輸入者が負担するため、サイト上に案内がないと購入者側で追加請求が発生し、クレームや返品につながるリスクもあるでしょう。
事前に販売国の関税制度を理解し、想定外のコスト発生を防ぐことが重要となるでしょう。
関連記事:越境ECの関税について徹底解説!国別の制度の違い・計算方法・注意点
越境ECで化粧品を海外に発送する際の必要書類

最後に、越境ECで化粧品を海外に発送する際に、必要となる書類について、以下の3点を解説します。
- インボイス・送り状
- パッキングリスト(梱包明細書)
- SDS(安全データシート)
化粧品は成分や用途に関する確認が厳しく、書類の記載内容に不備があると、通関遅延や差し止めといったトラブルにつながりかねません。
化粧品をトラブルなく海外へ発送するためにも、しっかり確認しておきましょう。
海外配送時に面倒な書類作成や通関手続きからお任せいただけるポチロジでは、Web上で今すぐ料金がわかるシミュレーションを提供しています。
シミュレーション結果画面からお問い合わせいただければ、専任スタッフがお客様のさまざまなお問合せに対応いたします。
インボイス・送り状
化粧品を海外へ発送する場合、インボイスには商品名・数量・単価・合計金額・用途・原産国などを正確かつ具体的に記載しなければなりません。
「cosmetics」などの大まかな表記ではなく、化粧水・美容液・クリームといった品目レベルまで詳しく記載するようにしましょう。
記載内容が曖昧な場合、税関で用途確認が入るため、通関が滞る原因になりかねません。
また、送り状に記載する内容とインボイスの情報に差異があると、追加確認や修正対応が発生する可能性もある点に注意が必要です。
関連記事:海外発送時のインボイスの書き方を徹底解説!インボイス(運送状)の注意すべきポイントと具体例付き
パッキングリスト(梱包明細書)
パッキングリストは、荷物の中身を箱単位で明確に示すための書類です。
どの箱に、どの商品が、何点ずつ入っているのかを詳細に記載し、通関時や輸送途中の確認資料として使用されます。
インボイス・送り状と同様、記載内容に不明な点があると、開梱検査が入ったり、通関遅延が発生したりする可能性もあります。
化粧品は数量や内容量が重視されるため、実際の梱包内容と完全に一致させることが大切です。
記載ミスが起こらないよう、作成時には十分な確認作業が求められます。
SDS(安全データシート)
SDS(安全データシート)は、化粧品に含まれる成分の危険性や安全な取り扱い方法を示す文書です。
アルコールやオイルなど、可燃性や揮発性が懸念される成分を含む製品では、SDSの提出が輸送可否や輸入判断の根拠となるケースも多くあります。
SDSには、成分情報、危険性や引火点の有無、保管時の注意点などが記載されており、輸送会社や税関が安全性を判断するための重要な資料として扱われます。
古い情報のまま提出すると差し戻しの原因になるため、必ずメーカーから最新版を取得し、対象国の要件を満たしているか確認しておくことが大切です。
越境EC/物流事業者の業務効率化ならポチロジ
ポチロジの海外輸送サービスでは、貨物情報の提供後、弊社の倉庫に搬入手配をいただくだけで、海外輸送の手配が完了します。
国際輸送をするうえで、面倒な書類準備や発送手配などはすべて弊社にて対応しているため、越境ECや物流業務を手がける事業者様からもご好評をいただいております。
また、WMSとの自動連携にも対応しており、在庫管理にかかる工数を大きく削減することができます。
最短2日での配送が可能な航空便のほか、大型貨物のコンテナ混載による船便にも対応可能です。
海外への輸送方法を検討中の方は、ぜひ一度ポチロジの海外輸送サービスをご検討ください。










